「行政書士試験」の学習時間とその内容を紹介!

「行政書士試験の受験を検討しているが、いつから始めたらいいのか」
「どういった学習内容ですすめていけばいいのか」

この記事では、行政書士試験の学習開始時期によって、どのような学習をしていけばいいのか紹介します。

※2024年(令和6年)度の試験より、「行政書士業務に関連する一般知識等」から「行政書士の業務に関し必要な基礎知識」に変更になり、出題問題に「行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令」が追加されました。

目次

行政書士試験合格に必要な学習時間

行政書士試験合格に向けて必要な学習時間については、受験者の法律知識に左右されます。法律学習経験者のほうが、法律学習未経験者よりも短い学習時間で合格できるでしょう。

また、行政書士試験学習を独学でするのか、通信講座を利用してするのか、専門学校に通学してするのかによっても異なってきます。

一般的には

  • 法律学習未経験者 & 独学    ⇒ 800~1,000時間
  • 法律知識あり   & 独学    ⇒ 600~700時間
  • 法律学習未経験者 & 予備校利用 ⇒ 700~900時間
  • 法律知識あり   & 予備校利用 ⇒ 500~700時間

と言われています。

いつから学習を始めたらいいか

いつから学習を始めるかは、本試験日から逆算して、1日平均でどのくらいの学習時間を確保できるかによって異なります。

例えば、【法律学習未経験者 & 独学 ⇒ 800時間】を前提とした場合、

1日当たりの平均学習時間必要な学習日数(1か月30日として)
2時間400日(約14か月)
3時間267日(約9か月)
4時間200日(約7か月)
6時間134日(約5か月)

となります。

行政書士試験の実施時期は例年11月のため、3時間ずつ約9ヶ月で学習する場合は、2月中旬ごろから始めると間に合う計算です。

あくまでも【法律学習未経験者 & 独学 ⇒ 800時間】を前提としているので、【法律学習経験者】や【予備校利用】の場合は、もう少し短い学習期間で合格まで達成できるでしょう。

また、毎日3時間の学習時間を確保できなくても、1週間単位で考えて、1週間で21時間(3時間×7日)として、例えば仕事がある平日は2時間、休みの土日は5時間とすれば、目標の21時間に近づけることは可能です。

結局のところ、①より効率の良い学習方法を、②より早い時期にスタートすることが、行政書士試験の学習においては必要となってきます。

行政書士試験の学習分野

行政書士試験における試験範囲は、以下の通りです。

試験科目出題内容出題形式
行政書士業務に関して必要な法令等(出題数46問)憲法、行政法、民法、商法・会社法、基礎法学・5肢択一式(40問)    
・多肢選択式(3問)
・記述式(3問)
行政書士業務に関連する基礎知識等(出題数14問)一般知識、行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令、情報通信・個人情報保護、文章理解・5肢択一式(14問)

行政書士試験のメインは、「行政書士業務に関して必要な法令等」で出題される、

  • 行政法
  • 民法
  • 憲法
  • 商法・会社法
  • 基礎法学

5分野なります。

行政書士試験で、基礎知識等を含めた、それぞれの分野ごとの出題数は以下の通りです。

科目5肢択一式(1問4点)多肢選択式(1問8点)記述式(1問20点)
行政法19問2問1問
民法9問なし2問
憲法5問1問なし
商法・会社法5問なしなし
基礎法学2問なしなし
基礎知識等14問なしなし

行政書士試験においては、出題数の多い「行政法」と「民法」の2分野で、どれだけ得点を伸ばせるかがキーポイントになります。この2分野で得点を伸ばせば伸ばすほど、合格により近づくことになります。

ただし、「行政法」と「民法」の2分野だけの得点では合格点は越えないので、憲法商法・会社法などの他の分野でも得点を伸ばすことも重要となります。

なお、基礎知識等は全14問(56点)中6問(24点)以上得点できないと、行政法や民法などの法令科目の得点にかかわらず、足切り不合格となってしまうので注意が必要です。

各分野の学習内容

行政法の学習内容

行政法の配点は300点満点中112点です。全体の37%を占めています。

行政法の出題数や配点は以下のとおりです。

出題形式出題数配点
5肢択一式(1問4点)19問76点
多肢選択式(1問8点)2問16点
記述式(1問20点)1問20点
合計22問112点

行政法の学習ポイント

行政法の出題は、条文の知識をそのまま問われる問題が多く、過去に出題された問題を繰り返し出題する傾向があります。

過去問での学習が有効であるため、学習しやすく力を伸ばしやすい科目でもありますります。

民法の学習内容

民法の配点は300満点中76点と、行政法の112点に次ぐボリュームがあり、全体の25%を占めます。

民法の出題数や配点は以下のとおりです。

出題形式出題数配点
5肢択一式(1問4点)9問36点
記述式(1問20点)2問40点
合計11問76点

民法の学習ポイント

民法の学習においては、AやBといった人物が登場して、土地や建物などに関する揉め事をどんな民法に照らして解決するといった事例問題に慣れることが必要です。

事例問題は、ただ民法の条文や過去の判例を暗記するだけでなく、試験問題の各設問のケースごとにどのような条文や判例が該当するのかを考えながら正解を導き出さなくてはなりません。民法の条文や過去の判例の丸暗記では太刀打ちできません。

また、民法分野では、記述式が2問出題されるため、5肢択一式の学習をする際には、記述式の問題を意識することも重要です。

記述式で多く出題される形式は、
・AはBに対して、どのような権利に基づき、どのような請求ができるか?
・Aはいつまでに、誰に対して、どのような催告をし、どのような結果を得る必要があるか?
といった形なので、それらの解答を想定しながら5肢択一式の学習をしていくことになります。

憲法の学習内容

憲法の配点は300点満点中28点で、行政法や民法と比べると配点比率は、高くないように思えるかもしれませんが、行政法や民法であまり得点が取れなくても、憲法で得点がとれれば合格できるケースもありえるので学習は必要でしょう。

憲法の出題数や配点は以下のとおりです。

出題形式出題数配点
5肢択一式(1問4点)5問20点
多肢選択式(1問8点)1問8点
合計6問28点

憲法の学習ポイント

憲法の学習分野では、主に判例の知識が問われます。判決文の中で、実際に試験に出題される箇所はある程度決まっているため、過去問を用いて出題傾向を探り、つかむことが効率的な学習には必要です。

また、条文知識がそのまま出題されることが多い傾向にあるため、条文知識を固めつつ、過去問を繰り返し解くことが重要となります。

商法・会社法の学習内容

商法・会社法は300点満点中20点で、5肢択一式問題のみ全部で5問出題されます。学習する範囲が広い割に出題数が多くないため、以前は捨て問題とされていたこともあります。

ただし、捨ててしまうにはもったいない科目なので、出題されやすい箇所に絞るなどメリハリのつけた学習が必要です。

商法・会社法の出題数や配点は以下のとおりです。

出題形式出題数配点
商法 5肢択一式(1問4点)1問4点
会社法 5肢択一式(1問4点)4問16点
合計5問20点

商法・会社法の学習ポイント

商法に関しては、最低限基本的なことを押さえておくという割り切りが必要です。具体的には、過去に出題された過去問を中心に基本的な事項を学習していきます。

会社法に関しても、「株式会社の設立」や「機関」などの頻出分野に絞って学習し、基本は過去問を中心にして学習していきます。

商法・会社法どちらについても言えることは、学習する範囲は広範囲にわたりながらも、出題数は5問(20点)に止まることから、あまり時間をかけて学習することは避け、頻出分野に絞って学習し、5問中2~3問の正解を目指すのが得策と思います。

基礎法学の学習内容

基礎法学は、300点満点中8点で、5肢択一式問題のみ2問出題されます。行政法や民法などと比べたら重要度は一番低めです。

基礎法学は、法学一般の幅広い知識の中から出題されるうえ、2問中1問は超難問で受験生は誰も知らないのでは?と思われる問題が出題される傾向にあるので、2問中1問を得点できるかになりますが、学習の割には4点の配点となるので、あまり時間をかけて学習する分野ではないと思います。

基礎法学の出題数や配点は以下のとおりです。

出題形式出題数配点
5肢択一式(1問4点)2問8点

基礎法学の学習ポイント

基礎法学は、あまり時間をかけず、過去問を中心にして学習していきます。出題数は2問で、ともに不正解でも、他の分野で得点を伸ばせれば合格できます。

学習の進み具合によっては、捨て問題と割り切りこともありです。

基礎知識等の学習内容

基礎知識は、300点満点中56点の配点があります。

また、基礎知識等は全14問(56点)中6問(24点)以上得点できないと、行政法や民法などの法令科目の得点にかかわらず、足切り不合格となってしまうので注意が必要です。

出題範囲は、

  • 一般知識
  • 行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令
  • 情報通信・個人情報保護
  • 文章理解

となります。

2024年(令和6年)の試験より、行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令が追加で出題されました。

例年であれば、①一般知識が政治・経済・社会の分野から8問、③情報通信・個人情報保護が3問、④文章理解が3問が平均して出題されています。

2024年(令和6年)の試験では、②行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令が何問出題されるかがポイントでしたが、結果は2問でした。

基礎知識等の出題数や配点は以下のとおりです。 ※2024年(令和6年)の出題実績

出題形式出題数配点
一般知識(政治・経済・社会)5問20点
行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令2問8点
情報通信・個人情報保護4問16点
文章理解3問12点

基礎知識等の学習で得点源にしたいのは、③情報通信・個人情報保護と④文章理解です。
この2つの分野できちっと得点できれば、足切り不合格は避けられる可能性は高まります。

行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令は、過去の行政書士試験で出題されており、2005年(平成17年)の行政書士試験の改正により、出題範囲から除外された経緯があります。当時出題されていた法令は、行政書士法、戸籍法、住民基本台帳法でした。

2024年(令和6年)の試験では、行政書士法と住民基本台帳法で各1問づつでしたが、2025年(令和7年)以降の試験では、戸籍法を含め、3つの法令が何問出題されるかがポイントとなります。

基礎知識等の学習ポイント

①一般知識は、政治・経済・社会の分野から出題されますが、範囲が広く、時間をかけるのは得策ではありません。時事問題も出題されますので、日頃から新聞やニュースを見ることが大事です。学習の進み具合によっては、捨て問題と割り切りこともありです。

②行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令は、基本的には条文の知識が問われます。行政書士法をメインに、過去問をベースにして条文を押さえていきましょう。

③情報通信・個人情報保護は、基本的には過去問ベースの学習が中心です。最新のIT用語が出題されやすいので押さえておきましょう。総務省の「国民のためのサイバーセキュリティサイト」に用語集が掲載されているので、参考にしてください。

④文章理解は、基本的に試験直前まで学習する必要はありません。試験直前になったら、過去問を解いて試験問題に慣れましょう。

各科目の学習配分

学習スケジュールをたてるときは、試験での配点比率の高い行政法民法に学習時間の半分以上を割くようにします。次いで、憲法や商法・会社法、一般知識等、基礎法学の順に割いていきます。

科目学習時間配分
行政法40~45%
民法20~25%
憲法10~15%
商法・会社法5~10%
基礎法学5%
基礎知識等5~10%
その他(模試等総まとめ)5%

学習スケジュール例

1月スタート例

学習科目
1月民法
2月民法
3月民法、行政法
4月行政法
5月行政法
6月行政法
7月憲法、商法・会社法、行政法と民法の復習
8月基礎法学、行政法と民法の復習、模擬試験
9月一般知識等、憲法と商法・会社法の復習、行政法と民法の復習、模擬試験
10月憲法と商法・会社法の復習、行政法と民法の復習
11月総復習

1月スタートであれば、平均的な学習時間の800時間は確保できるので、基本的には捨て科目なしでのすべて科目で得点がとれるように学習していきましょう。

4月スタート例

学習科目
4月民法
5月民法、行政法
6月行政法
7月行政法
8月憲法、商法・会社法、行政法と民法の復習
9月基礎法学、一般知識等、行政法と民法の復習、模擬試験
10月行政法と民法の復習、模擬試験
11月総復習

学習の進捗具合によっては、基礎法学の学習は捨てて、他の法令科目に力を注ぎましょう。

まとめ

①全ての教科に同じ時間を使って勉強するのは明らかに効率が悪いので、配点比率を考慮して、行政書士試験の学習に使える時間をもとに、学習時間を配分してくことが必要です。

②行政書士試験は満点を狙う必要はなく、180点(6割)以上得点できれば合格できる試験です。難しい問題を捨てたとしても合格は十分可能となります。受験生の半分以上が正解できる比較的やさしい問題を取りこぼさないことが必要です。

③行政書士試験に合格できると信じて、最後まであきらめないことです。模擬試験を受けて、合格点に満たない結果となっても、本試験の前日まで合格する信念をもってあきらめずに頑張ってください。

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